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TREASURE_TEXT「無月」(黒赤金)

※pepe様からの頂きものです。(黒赤金小説)



「無月」


ついこの間まで肌にまとわりついていた、ねっとりとした熱気がずいぶん緩んできたようだ。

明け方にはずい分冷え込んで、ラインハルトさまの指先も一段と冷やりとしている。
体温はそれほど低いわけではないのに、なぜか指先だけが冷たい。
手が冷たい人は心が温かいという。
切り取られた大理石のような、しっとりとすべらかで、どこかひんやりとした感触はいつまでも触れていたいと思う。

他者の中で表情を消しているときは、生あるものとは思えない美しい月の彫像と化す人。
本物の月はその地表に降り立てば、地上から見上げた時の輝きは見る影もない。
そんな落胆など持ちようもない、重力から逃れられない者にはそれこそ月虹のように触れることもできない人。
ただ、わたしにだけはその冷やりとした温度が、心地よいぬくもりとなって包み込んでくれる。

わたしにだけ向けられる眼差しに囚われる。

この方の傍にいるのはわたしだけ。
この方の瞳に映るのはわたしだけ。
この方に話しかけられるのはわたしだけ。
この方を理解できるのはわたしだけ。
この方についていけるのはわたしだけ。
この方と共に宇宙を羽撃いていけるのはわたしだけ。

そして・・・、この方を腕にできるのはわたしだけ・・・。

いつからだろうか、こんな醜い感情に支配されるようになったのは。
ラインハルトさまは、こんなわたしの想いをどう思われるだろうか・・・。
そう考えると、心臓を鷲掴みにされたような痛みに襲われる。


「どうした?」
低いバリトンがわたしを気にかける。
闇の中に浮かぶ、青と黒の虹彩がわたしを見つめている。
ラインハルトさまの凍てついた星のような眼差しとは違う、一方は理性が支配し一方は感情が入り乱れて混在しているかのような眼差し。
閉め切った室内には夜の静けさだけが支配して、表の喧騒は聞こえない。
その中で感じるのはお互いの熱だけ、響くのは荒い息遣いだけ。

与えられる快楽に身体が無意識に反応する。
刺激に身体は引き摺られるも、意識はどこか別なところへ向かっている。
抱かれながら、他の人間に心を奪われている。
息も止まるほどの最中に見出すのは、自分を見下ろす男の向こう側にいるあなた。

ああ・・・。
思わず閉じた瞼の裏に映されるのは黄金の煌めきもまぶしいあなただけ。

わたしは、ラインハルトさまにこうしてほしいのだろうか。
いや、違う。
そうではない。
この男がわたしを組敷き嬲るように、わたしがあなたを組敷きたいのだ。
組敷き、嬲り、わたしの滾る想いを浴びせかけ、あなたがわたしで欲情するさまを見たいのだ。
なんと浅ましい想いだろう。

高みに佇むあなたを引きずり下ろそうとするような、狂気にも似たこの想いに時々圧倒されそうになる。
押し込めることができずに溢れそうになると、この男は誘ってくるのだ。
まるで、わたしの全てを見透かしているように・・・。
そしてわたしは、罪悪感に囚われながらも、この男の誘いを拒むことができない。

自分でもどうしようもない、どうすればいいのか分からない。
ラインハルトさまと共に堕ちたいという誘惑に、どうすることもできない、それでも真実でもあるこの想いを。
この男は解放してくれるのだから・・・。

仰け反った時に目にした窓からは月は見えない。
今日は満月だったはずだが、雲に隠れてその姿を現していない。

それでいい。
月の光はあなたの眼差しのようだから。
全てを見透かすかのような、静かで冷たい、この世のものではない光。

こんな自分をあなたにだけは知られたくありません。
だからどうか、この時だけは隠れていて欲しいのです。



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